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厚生局の個別指導には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。
ここでは、診療録(カルテ)に関して、保険診療、診療報酬請求で個別指導を見据えて留意すべき事項のポイントをご説明します。ただし、以下は本コラム作成時点(2022年9月)のもので最新のものではなく、また、あくまで原則的なもので地域などにより運用等異なる場合がありますので、注意が必要です。
なお、厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。
詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】厚生局の個別指導と監査
https://医科個別指導弁護士.com/ika-kobetushidou.html
診療録(カルテ)に関する留意事項
1 診療録・カルテの記載、保存のルール
1 診療録・カルテの記載
医師法24条1項は、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定めています。医師には、診療をした際に、遅滞のない診療録の記載が義務付けられています。
また、療養担当規則22条は、「保険医は、患者の診療を行つた場合には、遅滞なく、様式第一号又はこれに準ずる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。」と定めており、医師法の規定と重ねて医師(保険医)に診療録の記載を義務付けています。
医師法24条1項の義務と療養担当規則の義務は、上記条文の記載文言のとおり、その内容が完全に一致するものではなく、医師である保険医は双方の規定の遵守が求められます。
2 診療録・カルテの保存
医師法24条2項は、「前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。」と定めています。管理者または医師には、診療録について、5年間の保存が義務付けられています。
なお、誰が診療録・カルテの保存をするのか、という点は、実務上難しい問題が生じ得るところなのですが(例えば、医療法人の分院が廃止され閉院した場合に誰がその分院の診療録・カルテを保存するのか、個人のクリニックで院長が死亡し閉院した場合に誰が診療録・カルテを保存するのか、等)、ここでは立ち入りません。
また、療養担当規則9条は、「保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から5年間とする。」と定めており、保険医療機関は、診療録について、完結の日から5年間の保存が義務付けられています。
「完結の日」とは具体的にいつを意味するのか、問題となるところですが、厚生局の個別指導での担当者は、その患者の最終診療日(その患者を最後にクリニックで診療した日)を「完結の日」と解釈しているケースが多い印象です(個別指導でそのように指導されるケースもあります。)。種々解釈の余地があり得るところですが、前記の立場からしますと、患者の最終来院日から5年間、一度もその患者の来院がなく診療をしていない場合に、診療録・カルテを廃棄できることになります。
2 カルテ記載の留意事項
1 カルテの記載時期
カルテは、診療や保険請求の根拠となるもので、診療を行った場合に遅滞のない必要事項の記載が求められます。
では具体的にいつまでに書くことが求められるかですが、個別指導での同席経験からしますと、個別指導では、外来患者の場合は、望ましいのは受診の都度、おそくとも当日中に記載することが求められることが多いイメージです。
2 カルテの記載内容の留意事項
個別指導でよく指摘される代表的なものを挙げますが、まず、診療内容・所見などの記載が乏しい(または記載がない)ケースが見受けられます。忙しい診療の中でカルテに日々十分な記載をすることは困難な側面があろうかと存じますが、しかし、一定程度の記載は行うこと(診療報酬の算定要件として定められている事項は必ず記載)が求められます。カルテの記載がない場合は、いわゆる無診察治療が疑われかねませんので、注意して下さい。
カルテを記載した場合は、責任の所在を明確化するため、診療を担当した保険医の診療の都度の署名または記名押印が求められます。ただし、手書きの紙カルテで管理者1名(医師)のみの診療所の場合は、この限りではありません。
カルテの記載内容の修正等を行う場合は、紙カルテの場合は、修正等したことがわかるように二重線等で行い、修正等の日時・行った者などがわかるように行います。
療養担当規則8条で、「保険医療機関は、第22条の規定による診療録に療養の給付の担当に関し必要な事項を記載し、これを他の診療録と区別して整備しなければならない。」と規定されており、保険医療機関においては、保険診療のカルテと自由診療のカルテを区別して記載し、整備・管理することが求められます。自由診療について保険診療のカルテにあわせて記載をしていた場合、厚生局の個別指導においては、改善を指導されることが見込まれます。
3 電子カルテの留意事項
1 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの遵守
電子カルテは、紙媒体に印刷されたものではなく電子的な記録がカルテの原本になるわけですが、電子カルテの要件は厳しく、クリニック・診療所がその要件を適切に満たすことのハードルは高いものと考えるべきです。
具体的には、厚生労働省が公表する「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の最新版の記載に基づく電子カルテの運用管理が求められます。
2 電子カルテの要件
詳細は上記のガイドラインを参照いただくべきことになりますが、例えば、電子カルテは以下の事項が求められます。
アクセスログの記録(システム操作に係る業務日誌等)が求められます。
パスワードについて守るべきルールが種々あり、遵守が求められます。
代行入力とその確定操作についてルールがあり、遵守が求められます。
いったん確定したカルテを更新する場合は、更新前と更新後の内容を照らし合わせることができることが求められます。
IDの適切な管理・運用が求められます。
カルテを含む医療のデジタル化は、大きな時代の流れであり、医療機関においては、取り残されないように、ルールを学び適切に対応していくことが求められるものと思われます。
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