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厚生局の個別指導と監査(医科)のコラムです。厚生局の個別指導、監査への対応は、厚生局の医師への指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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厚生局による保険診療の個別指導と監査

医科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。


まずお伝えしたいのが、医院への個別指導のルール、仕組みを、正確に理解している医師の方が少ないということです。厚生局の個別指導になぜ選定されたか、個別指導でどのようなことが行われるか、指導医療官はどのような点を指導してくるか、どのような患者が指定されるのか、どのように準備すべきか、など、きちんと理解することがポイントです。

ここでは、厚生局の保険医療機関(医科)への個別指導と監査の対応法と、指導監査の実施状況をご説明します。

個別指導と監査の上手な対応法


 1 個別指導(医科)の対策のポイント

医院に対する厚生局の個別指導は、法令に則った保険診療、診療報酬請求を医師、医療機関に周知徹底させるためのものです。

個別指導の結果いかんで、診療報酬の自主返還、監査、そして保険医・保険医療機関の取り消しの行政処分がなされ得ることから、医師の心理的な負担は相当なものとなります。

不適切な診療報酬請求をしていた場合は、それが故意ではなく過失によるものであっても、場合により、5年間の保険医・保険医療機関の取り消しなどの行政処分の対象となります。故意でなくとも、間違いによるものであっても、例えば実際には行われてない診療を行ったとして請求がなされていれば、厚生局は、不正請求として取消処分としてくることがあり得るのです。指導監査への対応の失敗は、その医院・クリニックの経営破綻に直結します。

以下、個別指導の対策のポイントを説明します。

1 個別指導の仕組み、ルールを知る

本ウェブページの冒頭部分で記載したとおり、まずお伝えしたいのが、医療機関への個別指導のルール、仕組みを、正確に理解している医師の方が少ないということです。

個別指導になぜ選定されたか、個別指導でどのようなことが行われるか、指導医療官はどのような点を指導してくるか、どのようなカルテが指定されいつ頃の診療について指導がなされるのか、情報提供・通報による個別指導の場合にどのような指導がなされるのか、など、きちんと適確に理解することがポイントです。

個別指導の実施の会場や、指導を担当する担当者の陣容から、厚生局のスタンスが推測できることもあります。個別指導の正確な理解があって、個別指導の正しい対策がはじめて可能になるというべきです。

厚生局の個別指導の通知が届いたら、直ちに、個別指導に詳しい方から、最新の情報を入手して下さい。

2 弁護士を同席をさせる

厚生局の個別指導では、どんなに度胸がある方であっても、不安を感じ、緊張してしまうものです。プレッシャーから、睡眠不足となる方も多いようです。その結果、冷静な対応ができなくなり、認めてはならない真実に反する事実を、誘導されて認めてしまうことがあります。同様に、担当官と大声で口論をしてしまい、担当官の心証を大きく悪化させてしまうこともあります。担当官も人間ですので、医師から感情的な対応をされると、厳しい対応で臨んでしまうものです。また、する必要のない不自然な弁解を繰り返してしまう方もいらっしゃいます。こうなると、担当官の心情として、真実を確認したいとの気持ちになり、個別指導を中断しての精査や、監査の方向に進んでしまうものです。

以上の不適切な対応を防ぐためには、手前味噌ですが、医師の完全な味方である弁護士を帯同し、厚生局の個別指導に同席させることをお勧めします。医師が対応に窮したときなど、必要に応じ助け舟を出せることがありますし、休憩で打ち合わせをしてから回答できる場合もあり、また、弁護士が同席するということそれ自体で、担当官の質問・対応が慎重になる効果が期待できます。

実際、指導中断などで2回目の個別指導から弁護士を同席させたケースでは、担当官の態度・追及が、1回目より非常に紳士的に、圧倒的にマイルドになったとの感想を頂戴します。また、個別指導は1回で終了するとは限りません。個別指導が途中で中断になり、患者調査が実施され、中断から数か月後に個別指導の2回目があるケースも稀ではありません。1回目から弁護士が同席していれば、2回目以降がある場合に、個別指導1回目の終了後の医師と弁護士との打合せで、弁護士が1回目の具体的なやり取りを踏まえた専門家としてのアドバイスが可能となり、2回目以降のより適切な個別指導対応に繋がります。また、個別指導の中断の際に、厚生局の指導医療官から、カルテなどの医療機関側の持参資料のコピーを求められることがありますが、これは断ることができ、その場合に、弁護士の方から断ってもらった方が、断りやすいと思われます(もっとも、必要性があると厚生局の指導医療官が判断しているためコピー等を求めていることになりますので、医院側・院長の判断で、コピーに応じる方向性も十分あり得ます。この点も含め、対応を弁護士に相談することが望ましいと思われます。)。

弁護士を同席させると、厚生局の個別指導の担当官に、やましいところがあるから弁護士を連れてきているのではないかと警戒され逆効果なのではないか、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、昨今では、弁護士の個別指導の同席は珍しいことではなくなっています。厚生局の個別指導に理解のある弁護士の同席は、指導医療官・担当者に法律に則った冷静な対応をさせることに繋がり、良い結果に結び付くと感じています。

3 個別指導への事前準備をきちんと行う

悪いことはしていないから、正直に話せば良い、出たとこ勝負でなんとかなる、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは、学校の定期試験に試験対策をせずに臨むようなものです。個別指導の十分な対策、事前準備を行うことをお勧めします。

事前準備の方法ですが、医師会や保険医協会に連絡し厚生局の個別指導の知識のある医師に指導してもらうことなどが考えられます。ただ、本業が別にある医師のサポートには限界がありますので、これについても、指導監査に詳しい弁護士にサポートを依頼し、個別指導での持参資料の準備、心構えや応答方法、対応方針などを十分に打合せ、準備を行うべきです。十分な準備をせずに個別指導に臨み、その結果、個別指導が中断となり、患者調査が開始され、その時点になって、ことの重大性を認識する医師の方もいらっしゃいます。

個別指導への具体的な準備は、個別指導の実施通知書記載の持参物の速やかな確認を前提に、高点数に基づく個別指導である場合は、まず、指導対象月を推測・把握します。そして、その期間を中心に、カルテの記載を確認し、実施した診療行為の記憶を喚起するとともに、診療報酬請求について、点検・指導が予測される点について、回答を準備することになります。

保険診療の算定要件、カルテ記載のルールは複雑で、多くの医師は、何らかの誤解をしている印象です。例えば、電子カルテの場合、電子カルテの厳しい要件を満たす必要があります。

診療に関する掲示事項等(施設基準の掲示、個人情報の保護に関する掲示、明細書の発行に関する掲示、保険医療機関であることの標示、等々)についても、適切な掲示等がなされていないケースが多々見受けられます。

保険診療と自由診療で混合診療となるのはどういったケースか、どこまでが混合診療とならず認められているか、また、看護師はどこまでの業務が診療の補助として認められるか、といった事項の理解も重要です。

また、厚生局は、個別指導で保険医療機関から録音の許可を求められた場合、指導を受けた内容を自ら確認するための指導時の録音は認めるとされており、この場合、厚生局側も録音することが通例です。個別指導で録音をするかですが、まず、印象としては、録音しない医療機関が数としては多いというイメージです。
録音をすれば、高圧的な指導を抑制する効果が期待でき、また、個別指導の終了後にやり取りを確認できることになります。しかし、録音を申し出ると、厚生局側も録音を開始し、録音が厚生局側に残ることから、指導医療官の杓子定規な対応に繋がる側面もあると感じています。
私見では、迷うのであれば、個別指導に弁護士を同席させる場合は録音せず、弁護士を同席させない場合は録音する、ということでよいのではないかと思います。

厚生局から個別指導の通知が届いた場合には、個別指導に詳しい弁護士への速やかな相談をお勧めします。当初からの個別指導への適切な対応が、個別指導の中断の回避、再指導や監査への移行の回避、そして自主返還金額の減額に繋がります。

なお、患者や内部告発などによる情報提供(通報)の個別指導である場合は、再指導や高点数によるものに増して、慎重な対応が必要です。厚生局が、不正請求による監査への移行を念頭に、個別指導を実施してくることがあるためです。個別指導の通知の前に、事前に患者調査を実施しているケースもあります。適切な対応が個別指導の中断の回避、監査への移行の回避に繋がりますので、手前味噌ですが、情報提供・通報での個別指導ではより強い意味で、指導監査に詳しい弁護士にサポートを依頼すべきです。

 2 保険医、保険医療機関への監査

保険医療機関等の診療内容または診療報酬の請求について、不正または著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握するために、通常、厚生局の個別指導が中断等されその数か月後(場合によっては1年以上後)に、厚生局の監査が行われます。そして、監査の終了後に、監査で確認された事実に応じ、取消処分の場合は聴聞手続きを経た上で、必要な措置(取消処分・戒告・注意)が採られます。

厚生局の監査は、医院・クリニックでの不正請求などが疑われていることが前提になされるもので、終了後の取消処分などが控えており、監査の結果次第で、保険診療ができなくなり、その場合、多くのケースでは、医院・クリニックは倒産することになります。保険医療機関の指定取消処分、保険医の登録取消処分を受けると、その旨が公表されるほか、原則として5年間、保険医療機関の再指定、保険医の再登録を受けることができなくなります。また、保険医の取消処分は、(場合により)医道審議会での医業の停止処分に結び付きます。
医道審議会については、医道審議会の行政処分のコラムに詳しく記載しています。

個別指導から監査に至らないようにすることがまず重要ですが、監査に至ってしまった場合は、取消処分(または取消相当の取扱い)がなされないように、適切に対応する必要があります。ただ、厚生局の監査に至った場合、その医師にかかるストレスは甚大であり、当事者であるご本人の医師のみでは、監査への対応について、正しい意思決定は困難かと思います。そのため、厚生局の監査に臨む医師の方は、医科の保険指導に詳しい弁護士に監査への同席と総合的なサポートを依頼し、弁護士と十分に協議・相談をした上で、適切な準備・意思決定を行い、弁護士を同席させて厚生局の監査に臨むべきです。

監査では、指導医療官(いわゆる技官)から、診療の流れなどの基本的な事項や具体的な患者の診療内容などについて尋ねられ、その上で、回答事項をまとめた書面などの確認・署名等を求められます。質問事項は、厚生局側があらかじめ準備しているケースが多い印象です。監査は、地域などにもよりますが、午前中から夕方まで、長時間の休憩をはさみ一日をかけて行われ、かつ、複数回行われることが通例です。開設者・管理者に加え、必要に応じ、勤務医やスタッフなども監査の対象者となり、出席を求められます。
弁護士を同席させることで、休憩時間などに回答内容・方針などについて弁護士からアドバイスを受けることができますし、回答事項をまとめた書面の確認・署名の際には、弁護士とともに内容を確認し、必要に応じ弁護
士のアドバイスの下に記載内容の修正を求めることもできます。また、厚生局の監査は、厚生局側の職員が、例えば8人程度の体制であり、対して医師が一人で対応するのでは、中立の立場の医師会などの医師の立会人がいるとしても、完全に雰囲気にのまれてしまいます。そこに厚生局の個別指導、監査に強い弁護士が同席することで、そのプレッシャーを大きく緩和することに繋がります。監査への弁護士の同席は、大きな効果が期待できます。

なお、厚生局の監査になると、気持ちが沈んでしまい、医院・クリニックの閉院を検討される医師の方もいらっしゃいます。しかし、監査となっても取消処分とはならないケースがありますので、ワーストケースを想定しそのための準備も行いつつも、前向きに考えて、スタッフと一丸となって充実した診療を継続していくことが重要です。

保険医と保険医療機関への個別指導と監査の統計


 1 指導と監査の実施状況

厚生労働省が公表している統計資料「令和4年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」によれば、令和4年度(2022年4月〜2023年3月)の医科の個別指導と監査の実施状況は以下のとおりです。

1 個別指導

保険医療機関等:医科 545件
保険医等   :医科1584人

2 新規個別指導

保険医療機関等:医科2490件
保険医等   :医科3437人

3 集団的個別指導

保険医療機関等:医科5626件

4 監査

保険医療機関等:医科  20件
保険医等   :医科  31人

 2 保険医療機関の取消、保険医の取消の状況

厚生労働省が公表している統計資料「令和4年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」によれば、令和4年度(2022年4月〜2023年3月)の医科の保険医療機関の指定取消と保険医の登録取消の状況は以下のとおりです。

1 指定取消・登録取消

保険医療機関等:医科   4件
保険医等   :医科   5人

2 指定取消相当・登録取消相当

保険医療機関等:医科   3件
保険医等   :医科   0人

取消相当とは、取消処分を行うべきケースについて、保険医療機関が既に廃止され、または保険医が既にその登録を抹消しているなどのため、取消処分を行えない場合に行われるもので、取消処分の場合と同様に、取消相当である旨が公表されるほか、原則として5年間、再指定(再登録)を受けることができなくなります。この取消相当は、行政処分ではなく行政上の措置の決定通知書において行政不服審査法及び行政手続法の規定に基づく「教示」を行う必要はないものとされています。

保険医療機関等が取消処分等に至る端緒としては、統計上、保険者、患者、スタッフなどからの情報提供・通報が多くなっています。情報提供・通報により厚生局の個別指導となった場合には、監査、取消処分を念頭に指導がなされることを想定すべきです。

なお、指導監査等に関する厚生労働省の令和3年1月18日付けの事務連絡があり、令和3年度について、いわゆる高点数の個別指導は実施しないとされており、また、令和3年度の集団的個別指導を受けた医療機関で令和4年度も引き続き高点数であった医療機関に対して令和5年度の高点数を理由とする個別指導は実施しないとされていることに、注意する必要があります。

また、同様に、厚生労働省の令和6年1月26日付けの事務連絡があり、令和4年度に集団的個別指導を実施した保険医療機関等のうち、令和5年度の実績においても、なお高点数保険医療機関等に該当する場合は、令和6年度の個別指導の対象となるが、令和5年度における新型コロナの影響を考慮し、令和6年度においては、対象となる保険医療機関等の数の上位より概ね半数程度(最大で保険医療機関等数の4%程度)を選定の上、実施に当たっては、令和元年度に集団的個別指導を実施し、かつ令和3年度に高点数を理由とする個別指導の対象に該当していた保険医療機関等を実施対象とするとされていることに、注意する必要があります。

令和6年度(2024年4月〜2025年3月)に「再指導」によらず新たに厚生局の個別指導に選定された医院・クリニックについては、令和6年度の高点数での選定の要件を満たし高点数での個別指導であることが想定されるか、それとも情報提供・通報での個別指導であることが想定されるか、的確に判断することが重要です。

厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方はお電話下さい。指導監査の対応を弁護士がアドバイスし、指導監査に弁護士が同席します。


厚生局の指導、監査のコラム


 1 保健医療機関・保険医の取消の実例


1  厚生局の情報提供での個別指導

2  厚生局の振替請求での監査

3  患者からの不正請求の情報提供

4  死亡した患者の診療報酬不正請求

5  コンタクトレンズの不正請求

6  鍼灸院・接骨院との不正請求

7  厚生局の監査の拒否、監査欠席

8  カルテの追記、改ざん、書き換え

9  無診察処方、無診察投薬の不正請求

10 施設基準の虚偽の届出、虚偽の報告

11 診療日数の水増しでの不正請求

12 医師の入院と中断中の個別指導の延期

13 医師の名義貸しでの新規個別指導の中断

14 医師の無診察の不正請求

15 医師の無診察治療での個別指導

16 再指導の個別指導からの監査

17 刑事事件の有罪判決(詐欺)での取消相当

18 訪問看護ステーションの個別指導

19 子供の診療での不正請求

20 14日後の処方箋の情報提供での個別指導

21 精神科デイ・ケアの施設基準の不正請求

22 情報提供での新規個別指導からの監査

23 後発医薬品を先発医薬品とする不正請求

24 健康診断での不正請求の情報提供

25 東北厚生局(宮城県)の個別指導、監査

26 近畿厚生局(大阪府)の個別指導、監査

27 病院での適時調査からの個別指導、監査

28 架空請求の情報提供での個別指導、監査

29 訪問診療での不正請求の情報提供、通報

30 個別指導の欠席での厚生局の監査

 2 個別指導の手続きの概要


1  個別指導の対象医療機関の選定基準、選定方法

2  個別指導の実施通知、出席者、指導対象患者

3  個別指導当日の指導方法、弁護士の帯同、録音

4  個別指導の結果の通知、改善報告書、自主返還

 3 新規個別指導の手続きの概要


1  厚生局の新規個別指導

 4 保険診療での留意事項


1  診療録(カルテ)の記載と保存のルール

2  傷病名のカルテ記載とレセプト病名

3  初診料と再診料の算定ルールのポイント

4  特定疾患療養管理料と特定薬剤治療管理料1

5  診療情報提供料(T)と薬剤情報提供料

6  往診料と在宅患者訪問診療料のポイント

7  超音波検査と呼吸心拍監視のポイント

8  エックス線診断料とコンピューター断層撮影診断料

9  処方箋料とリフィル処方箋のポイント

10 皮内、皮下及び筋肉内注射と静脈内注射

11 運動器リハビリテーション料のポイント

12 リハビリテーション総合計画評価料のポイント

13 通院精神療法(精神科専門療法)のポイント

14 精神科ショート・ケアと精神科デイ・ケア

15 創傷処置と皮膚科軟膏処置のポイント

16 消炎鎮痛等処置、湿布処置のポイント

17 人工腎臓(処置)の算定ルールのポイント

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