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精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの施設基準の不正請求の実例です。厚生局の個別指導、監査は、医師の指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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保険医療機関・保険医の取消の実例(21):精神科デイ・ケアの不正請求

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、指導監査の対応業務を行っています。

個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。


ここでは、匿名の者から、精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアに係る施設基準の届出に関して看護師が在職しておらず施設基準を満たしていないなどの情報提供が厚生局にあり、個別指導が実施され、監査となり、施設基準の虚偽の届出による不正請求で保険医療機関の指定の取消となった実例をご紹介します。近畿厚生局の令和2年1月付けの取消の実例であり、説明のため、事案の簡略化等をしています。

なお、厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。
詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

【コラム】厚生局の個別指導と監査
     https://医科個別指導弁護士.com/ika-kobetushidou.html



精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの不正請求の情報提供


 1 監査に至った経緯

1 精神科デイ・ケア、ショート・ケアの不正請求の通報

平成29年6月20日、近畿厚生局指導監査課に対し、匿名の者から@施設基準として精神科デイ・ケア(大規模なもの)及び精神科ショート・ケア(大規模なもの)(以下「精神科デイ・ケア等」という。)を届出しているが、医師、作業療法士、精神保健福祉士の他は、准看護師しか在職しておらず、届出提出時から看護師が在職していない状態で診療報酬を算定している、A精神科デイ・ケア等を届出した時から、看護師の確保が必要だと言っていたにもかかわらず、そのまま放置され施設基準を満たしていない状態が続いている旨の情報提供があった。

【コメント】
精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアに係る施設基準の届出に関して、看護師が在籍しておらず施設基準の要件を満たしていないとの情報提供・通報が、近畿厚生局に匿名でなされています。

看護師などの人員が要件を満たしておらず、施設基準を満たしておらず、不正請求となる場合は、その対象となるレセプト・患者の数が大きくなる傾向があり、厚生局の個別指導などで診療報酬の返還をする場合、手続き的な負担も大きく、医院経営へ重大な影響があります。

本件の通報、情報提供は、通報者が看護師がクリニックに在籍していないことを把握しており、精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアを届出したときから看護師の確保が必要だったと言っていたとのことであり、クリニックの内部者・内部関係者であることが推測されます。厚生局に不正請求が通報・情報提供される場合、退職したスタッフなどの内部者からのケースが稀ではなく、また、内部者である場合は覚悟をもって情報提供に踏み切っておりその情報の信ぴょう性が高いことが多く、他の情報提供に比し個別指導や監査に至りやすい印象です。

2 クリニックへの確認と看護師勤務の回答

平成29年8月1日、開設者及び事務長に対して、精神科デイ・ケア等の施設基準について、平成26年10月の届出時から看護師が勤務していたか確認したところ、開設者から勤務していた旨の回答があったため、看護師の勤務に関する報告書の作成及び平成27年度以降の標準報酬算定基礎届(7月1日現在で健康保険、厚生年金保険の被保険者及び70歳以上被用者に4月から6月までに支払った報酬を事業主から日本年金機構へ提出する書類。以下「算定基礎届」という。)の写しの提出を依頼した。

【コメント】
近畿厚生局が、上記の情報提供を受け、クリニックに対し、精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの施設基準について、看護師の勤務状況を確認し、その結果、勤務していた旨の回答を開設者から得ています。そして、厚生局は、これで満足せず、看護師の勤務に関する報告書と日本年金機構に提出する標準報酬算定基礎届の写しの提出をそれぞれ依頼しています。厚生局としては、看護師がいなかったとの通報・情報提供を受けており、それに反し、看護師が本当に勤務していたか、クリニックにそれを裏付ける証拠資料の提出を求めた流れとなります。

3 看護師の勤務実態に係る不自然な算定基礎届

平成29年8月7日、報告書及び平成29年度の算定基礎届の写しの提出があり内容の確認を行ったところ、算定基礎届に印字されている虚偽看護師の氏名の位置及びフォントサイズが他の被保険者と異なっていること及び生年月日が作業療法士と同一であることから看護師の勤務実態について疑義が生じた。

【コメント】
クリニック側から看護師が勤務している内容での報告書の提出がありましたが、標準報酬算定基礎届の記載に不自然な点があり、看護師の勤務について厚生局に疑義が生じています。

4 個別指導の実施、個別指導の中断

平成29年12月27日、個別指導を実施したところ、開設者から看護師は、当該保険医療機関に勤務していたとの回答があったものの、提出された算定基礎届から生じた疑義を確認したところ、明確な回答が得られなかったことから、個別指導を中断した。

【コメント】
厚生局の個別指導が実施され、不自然な算定基礎届について確認したところ、厚生局が納得できる回答はなく、個別指導の中断に至っています。

個別指導に臨む前提として、厚生局担当者としては、当該クリニックで看護師は当時勤務していなかったと判断しており、精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの施設基準について不正請求であったと想定しており、そうでないのであれば納得できる説明をしてもらいたい、というスタンスであった可能性があります。その結果、個別指導においてクリニック側から納得できる説明はなく、疑義が解消されず、中断となったことと思われます。

5 開設者の不正の自認、監査の実施

平成30年2月22日、個別指導を再開したところ、開設者から当該保険医療機関に看護師が勤務していた事実はなく、届出は虚偽の看護師名を記載した不実の内容であった旨の発言があった。

このことから、精神科デイ・ケア等の施設基準の届出について、実際に施設基準を満たしていないにもかかわらず、満たしているとして不実の届出を行い、診療報酬を不正に請求していたことが強く疑われたことから個別指導を中止し、監査要綱の第3の1及び2に該当するものとして、平成30年6月7日から同年12月21日まで計8日間の監査を実施した。

【コメント】
再開された個別指導で、クリニックの開設者が、当該看護師が勤務した事実はなく、届出は虚偽の看護師名を記載した不実の内容であったことを認め、その結果、精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの施設基準の届出について、不正請求であった疑義が濃厚となったことから、個別指導が中止され、監査に至っています。

結果論ですが、個別指導の前の段階の当初から勤務した事実がないことを厚生局に認めていれば、厚生局の寛大な対応となった可能性もゼロではないと考えますが、虚偽の説明等を繰り返すことで、クリニック側がより悪い状況に追い込まれ、厚生局の監査の実施に至っています。

 2 取消の理由と不正・不当請求金額

1 取消の主な理由

近畿厚生局の公表資料によれば、監査において判明した取消の理由となる主な事実は、以下のとおりです。

施設基準の虚偽の届出での不正請求:
精神科デイ・ケア(大規模なもの)及び精神科ショート・ケア(大規模なもの)の施設基準の届出について、実際には必要な専従者である看護師が勤務していないにもかかわらず、勤務している旨の事実と異なる届出を行い、診療報酬を不正に請求していた。

【コメント】
看護師が勤務していないのに勤務しているとして施設基準の届出を行った不正請求が認定されています。

精神科デイ・ケアや精神科ショート・ケアをはじめ、人員・看護師等の勤務が要件とされている施設基準について、実態と異なる届出を行うことは、厳に避ける必要があります。故意・意図的でなくとも、知識不足や手違いで施設基準の要件を満たしていないケースもあり得ますので、施設基準について最新の状況を把握しつつ、要件充足のチェック・確認を継続していくことが肝心です。

2 不正・不当請求金額

平成29年5月から平成29年9月までについて、レセプト95件25名分で172万3435円の不正請求が、レセプト147件33名分で164万310円の不当請求が、監査で判明しています。


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指導監査への対応を弁護士がアドバイスし、同席します。


厚生局の個別指導、監査のコラム


指導監査のコラム一覧です。
精神科デイ・ケア、精神科ショート・ケアの不正請求の通報での個別指導の実例の他、多数コラムがございます。
個別指導や監査の際に、また日常の運営にご活用いただければ幸いです。

 1 個別指導と監査の対応法


1  厚生局の個別指導と監査


 2 保健医療機関・保険医の取消の実例


1  厚生局の情報提供での個別指導

2  厚生局の振替請求での監査

3  患者からの不正請求の情報提供

4  死亡した患者の診療報酬不正請求

5  コンタクトレンズの不正請求

6  鍼灸院・接骨院との不正請求

7  厚生局の監査の拒否、監査欠席

8  カルテの追記、改ざん、書き換え

9  無診察処方、無診察投薬の不正請求

10 施設基準の虚偽の届出、虚偽の報告

11 診療日数の水増しでの不正請求

12 医師の入院と中断中の個別指導の延期

13 医師の名義貸しでの新規個別指導の中断

14 医師の無診察の不正請求

15 医師の無診察治療での個別指導

16 再指導の個別指導からの監査

17 刑事事件の有罪判決(詐欺)での取消相当

18 訪問看護ステーションの個別指導

19 子供の診療での不正請求

20 14日後の処方箋の情報提供での個別指導

21 精神科デイ・ケアの施設基準の不正請求

22 情報提供での新規個別指導からの監査

23 後発医薬品を先発医薬品とする不正請求

24 健康診断での不正請求の情報提供

25 東北厚生局(宮城県)の個別指導、監査

26 近畿厚生局(大阪府)の個別指導、監査

27 病院での適時調査からの個別指導、監査

28 架空請求の情報提供での個別指導、監査

29 訪問診療での不正請求の情報提供、通報

30 個別指導の欠席での厚生局の監査

 3 個別指導の手続きの概要


1  個別指導の対象医療機関の選定基準、選定方法

2  個別指導の実施通知、出席者、指導対象患者

3  個別指導当日の指導方法、弁護士の帯同、録音

4  個別指導の結果の通知、改善報告書、自主返還

 4 新規個別指導の手続きの概要


1  厚生局の新規個別指導

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