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無診察投薬、無診察処方の厚生局の個別指導、監査のコラムです。厚生局の個別指導、監査は、医師の指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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保険医療機関・保険医の取消の実例(9):無診察処方、無診察投薬

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、指導監査の対応業務を行っています。

個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。


ここでは、県の担当課から、患者への実態調査で実施していない手術を実施したとして保険請求されていることが疑われる旨の情報提供があり、個別指導が実施され、監査となり、付け増し請求、無診察処方・無診察投薬で保険医療機関の指定取消となった実例をご紹介します。近畿厚生局の平成25年9月付けの取消の実例であり、説明のため、事案の簡略化等をしています。

なお、厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。
詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

【コラム】厚生局の個別指導と監査
     https://医科個別指導弁護士.com/ika-kobetushidou.html



無診察処方・無診察投薬での個別指導、取消処分


 1 監査に至った経緯

1 県の担当課への不正請求の情報提供

平成23年10月5日、県の福祉保健部健康局健康づくり推進課を通じて、保険者から近畿厚生局県事務所に対して、患者への実態調査の結果、実施していない手術を実施したとして保険請求されていることが疑われる旨の情報提供があった。

【コメント】
本ケースでは、県の担当課において、患者への実態調査が行われ、その結果、実施していない手術を実施したとして保険請求されていることの疑義が生じ、厚生局への情報提供に至っています。

このように都道府県側で患者への調査がなされ、その結果に基づき、厚生局の個別指導に至るケースも、稀ではありません。特に、国保や後期高齢の患者について、このルートで情報提供がなされ個別指導に至っていると考えられるケースがあります。

都道府県側での患者の実態調査の方法などはケースバイケースですが、書面でのやりとりにとどまらず、患者との対面・面談での調査が実施されるケースもあります。

なお、付け増し請求の不正請求に分類される無診察処方・無診察投薬の疑義についても、この段階で、疑義が生じていた可能性が十分あります。

2 個別指導の中断

情報提供を受け、平成24年6月7日、近畿厚生局は、係る診療所に対して個別指導を実施したところ、診療録に診療内容や検査結果が記載されていない例が認められ、説明を求めたが、明確な回答が得られなかったことから、個別指導を中断した。

【コメント】
個別指導が情報提供により実施された場合、当該情報提供に係る不正請求の疑義について、持参資料を確認し、また、必要に応じ、個別指導の中で疑義について質疑がなされることになります。

厚生局側が、医療機関が指導に持参した書類上の記載と異なる事実を前提に、不正請求の存在がないか個別指導で質問した場合、背景に情報提供があり、疑義が解消できないため質問していることが多い印象です。係る質問の回答で厚生局側が疑義が解消したと判断し引き下がれば良いのですが、疑義が解消しないと判断し引き下がらない場合、または、医療機関側が不正請求を認め厚生局側がさらなる事実確認が必要と考える場合や個別指導の監査への移行を検討する場合は、個別指導の中断に繋がります。

個別指導の中断に至るケースでは、私が個別指導に多数同席した経験、また多数相談(中断後の相談を含みます。)を受けた経験からしますと、あらかじめ厚生局側が中断を予定していたと感じるケースもあれば、中断は予定していなかったものの、個別指導の中で疑義が生じ(急遽)中断を判断したと感じるケースもあります。前者のケースでは中断が避け難い側面があるのですが、後者のケースでは、厚生局側にその場で適切に説明するなどにより、中断を回避できたと思われるケースがあります。個別指導に臨む際には、中断とならないように、個別指導の仕組みを正しく理解し、適切に対応することが重要です。

3 個別指導の再度の中断と監査への移行

平成24年9月20日、個別指導を再開し、開設・管理者に診療事実の有無を確認したが、明確な回答が得られなかったことから個別指導を中断した。

平成24年11月5日、個別指導の内容を精査した結果、実際には行っていない検査、手術及び画像診断等の診療報酬を不正に請求していることが強く疑われたため、個別指導を中止し、監査要綱の第3の1及び2に該当するものとして、平成24年11月15日、16日、平成25年1月17日、2月14日及び3月21日に監査を実施した。

【コメント】
個別指導の中断が2回続いた場合(すなわち、中断再開後の個別指導でさらに個別指導が中断となった場合)、一般的には、厚生局として監査への移行を判断している可能性が高いと思われます。

本ケースでも、2回目の中断後、実際には行っていない検査や手術、画像診断等の診療報酬が請求されていることが疑われるとして、個別指導が中止となり、監査が実施されています。なお、監査への移行の際の理由付けとしては、無診察処方・無診察投薬については、公表されたプレスリリース上は、挙げられていないことに注意が必要です。

 2 取消の理由と不正・不当金額

1 取消の主な理由

第一に、付増請求であり、実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。第二に、その他の請求(無診察処方・無診察投薬)であり、診察をせず投薬するとともに、実際には行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。

【コメント】
いわゆる無診察処方、無診察投薬で、診察をせずに処方・投薬をした場合は、保険診療上のルール違反だけではなく、医師法上のルールにも違反することが考えられます。

医師法20条は、医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し(…)てはならない(…)、と定めており、本条の解釈は種々あり得るところですが、医師は、診療をするにあたって、本条に違反しないように、十分留意することが求められます。

なお、本ケースの保険医療機関は、平成21年10月に保険医療機関に指定されており、指定から約2年8か月後の平成24年6月に情報提供で個別指導となり、指定から3年11か月後の平成25年9月に取消処分となっています。

2 不正・不当の金額

平成23年1月から平成23年7月までについて、レセプト85件27名分で527万2029円の不正請求が、レセプト6件1名分で1万4859円の不当請求が、監査で判明しています。ただし、この件数・金額は、監査で判明したもののみであり、最終的な確定した金額ではないことに注意が必要です。


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厚生局の個別指導、監査のコラム


指導監査のコラム一覧です。
無診察処方、無診察投薬での取消の実例の他、多数コラムがございます。
個別指導や監査の際に、また日常の運営にご活用いただければ幸いです。

 1 個別指導と監査の対応法


1  厚生局の個別指導と監査


 2 保健医療機関・保険医の取消の実例


1  厚生局の情報提供での個別指導

2  厚生局の振替請求での監査

3  患者からの不正請求の情報提供

4  死亡した患者の診療報酬不正請求

5  コンタクトレンズの不正請求

6  鍼灸院・接骨院との不正請求

7  厚生局の監査の拒否、監査欠席

8  カルテの追記、改ざん、書き換え

9  無診察処方、無診察投薬の不正請求

10 施設基準の虚偽の届出、虚偽の報告

11 診療日数の水増しでの不正請求

12 医師の入院と中断中の個別指導の延期

13 医師の名義貸しでの新規個別指導の中断

14 医師の無診察の不正請求

15 医師の無診察治療での個別指導

16 再指導の個別指導からの監査

17 刑事事件の有罪判決(詐欺)での取消相当

18 訪問看護ステーションの個別指導

19 子供の診療での不正請求

20 14日後の処方箋の情報提供での個別指導

21 精神科デイ・ケアの施設基準の不正請求

22 情報提供での新規個別指導からの監査

23 後発医薬品を先発医薬品とする不正請求

24 健康診断での不正請求の情報提供

25 東北厚生局(宮城県)の個別指導、監査

26 近畿厚生局(大阪府)の個別指導、監査

27 病院での適時調査からの個別指導、監査

28 架空請求の情報提供での個別指導、監査

29 訪問診療での不正請求の情報提供、通報

30 個別指導の欠席での厚生局の監査

 3 個別指導の手続きの概要


1  個別指導の対象医療機関の選定基準、選定方法

2  個別指導の実施通知、出席者、指導対象患者

3  個別指導当日の指導方法、弁護士の帯同、録音

4  個別指導の結果の通知、改善報告書、自主返還

 4 新規個別指導の手続きの概要


1  厚生局の新規個別指導

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