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訪問診療の不正請求の情報提供・通報での厚生局の監査(医科)の実例です。厚生局の個別指導、監査は、医師の指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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保険医療機関・保険医の取消の実例(29):訪問診療の不正請求

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ここでは、匿名の者から、九州厚生局に、訪問診療の不正請求の情報提供、通報があり、患者調査が実施され、監査となり、元保険医療機関の指定の取消相当となった実例をご紹介します。九州厚生局の令和3年12月付けの取消相当の実例であり、説明のため、事案の簡略化等をしています。

なお、厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。
詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

【コラム】厚生局の個別指導と監査
     https://医科個別指導弁護士.com/ika-kobetushidou.html



訪問診療での不正請求の情報提供・通報での患者調査、監査の実例


 1 監査に至った経緯

1 九州厚生局への訪問診療の不正請求の情報提供

平成29年12月25日、匿名の者から、患者宅には准看護師が訪問したにもかかわらず、医師が訪問診療を行ったとして院長が診療録に記載し、事務に対して在宅時医学総合管理料及び在宅患者訪問診療料を算定するよう指示をしている旨、さらに、翌26日にも、同一人物と思われる匿名の者から、具体的な患者名及び訪問日の情報提供があった。

【コメント】
福岡県福岡市のクリニックについて、福岡県の診療所を管轄する九州厚生局に、匿名の者から不正請求の情報提供・通報がなされています。本ケースで情報提供、通報された内容から推測しますと、クリニックのスタッフなど内部者からの情報提供だと思われます。

医師が訪問せず医師ではないスタッフが訪問したにもかかわらず、医師が訪問をしたとして診療報酬を請求する不正は、訪問診療での典型的な不正請求の1つと考えられます。

2 訪問診療の不正請求などの情報提供

平成30年10月24日、匿名の者から、@訪問診療を行っていないのに訪問診療を行ったとして訪問診療料を算定している、A患者の希望により無診察で処方箋を発行しているなどの情報提供があった。

【コメント】
九州厚生局に対し、匿名の者から、訪問診療の不正請求などの情報提供がなされています。

上記1の情報提供から10か月ほどあり、この情報提供を行った者が上記1の情報提供を行った者と同一人物かは公表資料からは不明です。ただ、10か月ほどたっていることからすると、別の人物である可能性が十分あります。

本ケースのように、情報提供があっても、厚生局は、必ずしも個別指導などの対応を速やかに行うわけではありません。

3 患者調査の実施

令和元年9月12日から同月20日の間に22名に対し患者調査を実施したところ、11名について、次のような事象が認められた。なお、11名のうち7名については、特定の事業所の従業者である。

@2名について、行っていない訪問診療の診療報酬が請求されている。

A2名について、回答のあった訪問日数より診療報酬の請求日数の方が多い。

B事業所に勤務する6名の初診日の診療について、勤務先を訪問し、保険診療と認められないものを保険診療を行ったものとして、診療報酬が請求されている。また、6名の再診日以降の診療について、実際には診療を行っていないものを、診療を行ったものとして、診療報酬が請求されている。

【コメント】
訪問診療の不正請求の疑義などにより、患者調査が実施されています。この患者調査の実施までに、当初の情報提供から、かなりの期間が経過していることに注意が必要です。

厚生局の患者調査の結果、行っていない訪問診療の診療報酬請求が確認されるなど、訪問診療の不正請求の疑義が深まっています。

患者調査が実施される前に個別指導が実施され個別指導が中断とされていることがスタンダードな流れですが、公表資料によれば、本ケースのクリニックは平成31年2月23日に保険医療機関の廃止届が提出されているとのことであり、そこで、本ケースでは、個別指導が実施されず、直ちに患者調査が実施されたものと思われます。

4 福岡地検からの供述調書の提供、監査の実施

令和元年10月31日、福岡地方検察庁から提供を受けた供述調書には、診療報酬詐欺事件について医師が関与している内容が記載されていた。

以上のことから、診療内容及び診療報酬の請求に不正又は著しい不当の疑義が生じたため、監査要綱の第3の1及び2に該当するものとして、令和元年11月5日から令和2年11月17日まで計6回、延べ7日間の監査を実施した。

【コメント】
本ケースでは、開設者・管理者の医師が、詐欺罪により有罪判決を受け刑が確定しており、それに関して、九州厚生局が、福岡地検から供述調書の提供を受け、医師の診療報酬の不正請求について精査したものと考えられます。

本ケースのように、医師が診療報酬に関し詐欺罪で有罪判決がなされ確定した場合、厚生局としても、積極的に調査・検討の上で、監査の実施等を判断するものと考えられます。

 2 取消相当の理由と不正請求額

1 取消相当の主な理由

九州厚生局の公表資料によれば、福岡県の係るクリニックについて、取消相当の主な理由は、以下のとおりです。

架空請求:
実際には行っていない保険診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
《具体的事例 》
・実際には診療録に初診の記載のある月以外の月については診療していないにもかかわらず、診療したものとして診療報酬を不正に請求していた。

付増請求:
実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。
《具体的事例 》
・実際には行っていない外来診療の日数を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。

振替請求:
実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正に請求していた。
《具体的事例 》
・実際には訪問看護を行った患者について訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。

その他の請求:
不正請求であって架空請求、付増請求、振替請求に該当しないもの。
《具体的事例 》
・健康診断目的で検査等を行ったものについて保険診療を行ったものとして 、診療報酬を不正に請求していた。

禁錮以上の刑に処せられたこと:
クリニックの開設・管理者であり保険医でもある医師が当該クリニックの職員2名と共謀のうえ、400,702円(生活保護357,330円、医療保険43,372円)を詐取したとして、令和元年6月24日、詐欺罪により福岡地方裁判所から懲役2年、執行猶予3年の判決を受け、令和元年7月9日に刑が確定している。

【コメント】
訪問診療の不正請求の他、架空請求や禁錮以上の刑に処せられたことなどが取消相当の理由として挙げられています。

2 不正請求額

九州厚生局の公表資料によれば、レセプト34件19名分で20万9897円の不正請求が、監査で確認されています。


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厚生局の個別指導、監査のコラム


指導監査のコラム一覧です。
訪問診療の不正請求の情報提供、通報での監査の実例の他、多数コラムがございます。
個別指導や監査の際に、また日常の運営にご活用いただければ幸いです。

 1 個別指導と監査の対応法


1  厚生局の個別指導と監査


 2 保健医療機関・保険医の取消の実例


1  厚生局の情報提供での個別指導

2  厚生局の振替請求での監査

3  患者からの不正請求の情報提供

4  死亡した患者の診療報酬不正請求

5  コンタクトレンズの不正請求

6  鍼灸院・接骨院との不正請求

7  厚生局の監査の拒否、監査欠席

8  カルテの追記、改ざん、書き換え

9  無診察処方、無診察投薬の不正請求

10 施設基準の虚偽の届出、虚偽の報告

11 診療日数の水増しでの不正請求

12 医師の入院と中断中の個別指導の延期

13 医師の名義貸しでの新規個別指導の中断

14 医師の無診察の不正請求

15 医師の無診察治療での個別指導

16 再指導の個別指導からの監査

17 刑事事件の有罪判決(詐欺)での取消相当

18 訪問看護ステーションの個別指導

19 子供の診療での不正請求

20 14日後の処方箋の情報提供での個別指導

21 精神科デイ・ケアの施設基準の不正請求

22 情報提供での新規個別指導からの監査

23 後発医薬品を先発医薬品とする不正請求

24 健康診断での不正請求の情報提供

25 東北厚生局(宮城県)の個別指導、監査

26 近畿厚生局(大阪府)の個別指導、監査

27 病院での適時調査からの個別指導、監査

28 架空請求の情報提供での個別指導、監査

29 訪問診療での不正請求の情報提供、通報

30 個別指導の欠席での厚生局の監査

 3 個別指導の手続きの概要


1  個別指導の対象医療機関の選定基準、選定方法

2  個別指導の実施通知、出席者、指導対象患者

3  個別指導当日の指導方法、弁護士の帯同、録音

4  個別指導の結果の通知、改善報告書、自主返還

 4 新規個別指導の手続きの概要


1  厚生局の新規個別指導

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